映画「サニー」を観た。

前回の記事で横道世之介のことを書いていて、それで思い出したんですけど、同じようなテイストの映画で残念だったのが「サニー」という映画です。観たのは3ヶ月ぐらい前ですけどね。

 


映画『サニー 永遠の仲間たち』予告編 - YouTube

 

あらすじ

主婦のナミは、母の入院先で余命2か月の病に冒されている高校時代の友人チュナと再会する。ナミはチュナの願いを叶えるため、25年前に永遠の友情を誓ったものの、ある事件を機にはなればなれになってしまった仲良し7人組、通称“サニー“のメンバーを探し始める。

 

感想(ネタバレあり)

この映画も横道世之介同様、いろいろな映画サイトで絶賛されていたのですが、僕的にはあんまり評価できない感じでした。感想も複雑な感じで、最後の15分ぐらいまではすごくおもしろかったんですけど、最後の15分で台無しになった映画がこの映画だなーと思います。

僕はおすすめできない映画なのでネタバレありで感想を書いてしまいますが(つまり観なくても良い映画だと思っている)、これも横道世之介同様、主人公のナミが現在は主婦で、それが高校時代の友人・チュナに出会い、高校時代の頃を思い出しながら、昔の仲間たちを探す物語なんですね。だから、現在パートと高校時代パートが交互に入り混じりながら物語が進んでいく。

その高校時代のエピソードはすごくおもしろくて。ここだけを切り取ったらメチャクチャおもしろいと思うんですよね。主人公のナミは転校生なんですが、最初は一人ぼっちでいじめられそうだったんですが、チュナに”サニー”という仲良しグループに入れてもらって、そこでケンカしたり恋をしたりしながら成長していくんですが、そこがめちゃくちゃいい感じの青春時代なのです。メンバーの7人が個性豊かで、それぞれ色んなコンプレックスや夢を抱えているんですがキラキラ輝いていて、なんていうか、「7人でいれば無敵」感があるんですよね。高校時代の仲良しグループって、こういう感じあったなーとしみじみ思い出しました。

で、それに対して現在パートは結構みんな悩みがあったり、落ちぶれていたりして、現実は大変だな、でもあの頃の輝きを取り戻そうよ!みんな再会してがんばろうよ!っていうのがこの映画の趣旨なわけです。

 

で、何がそんなにラストがひどいかっていうと、2点あって。

1点目は、チュナは会社の社長になっていてすごい資産を持っているんですが、余命数日という状況で、ナミはチュナのためにサニーのメンバーを探しだすんですが、結局間に合わないのです。ですがチュナが死んだ葬式のときにようやく全メンバーが揃うんですが、そのときにチュナの遺言でメンバーにいろいろプレゼントがあり、それぞれの悩みが全部その資産で解決されてしまうのです!

職が無い人も、お金がない人も、風俗嬢も、全部チュナがいろいろ手配して、全員の悩みが解決!例えば、いきなりおまえ明日から子会社の社長な!ってノリで職を与えられたり。これには僕も目を疑いまして、マジで??って感じでした。いろんな人の感想で、「それだけチュナにとってサニーのメンバーが大事だった」とか「映画ぐらいこういうポジティブなほうが良い」という意見もあったのですが、僕は断じてこれはやっちゃいけないことだと思うのです。

サニーのメンバーは20年間、いろいろあったかもしれませんがそれぞれ努力して必死に生きてきて、映画の中では描かれない苦労をして辿り着いた結果が現在の姿だと思うのです。それを、たまたま20年ぶりに出会っただけで宝くじみたいなノリでその苦悩を解決してしまうのって、じゃあサニーのメンバーの人生は何だったんだ?ってならないんですかね。

で、2点目は、サニーのメンバーが20年間ずっと会ってなかった理由が全然無かったことです。たしかに、終盤事件が起こってみんな別の学校に転校して、っていうのがあったんですが、たかだか20年前なら親友グループなら連絡取らないか普通、って思うのです。取らないってことは、その程度の仲だと思うのです。別にそういう友達関係って現実にあるし、それでもいいと思うのですが、断じて死ぬ間際に最後に会いたい存在が、その程度の仲の友達っていうのは、変だと感じてしまうのです。映画は、終盤の事件で離れ離れになるまで、なんでみんなが20年間会っていなかったかが描かれなくて、僕は最後に会わなくなった理由がきちんとあって、それが現在のパートできちんと解消されるカタルシスがあるのかと思っていたのですが、そんなの全く無かった。これは、いかん。

なんで横道世之介を観てこれを思い出したかっていうと、横道世之介は逆に、大人になった当時の友達があんまり横道世之介を覚えていなくて、疎遠になっているのがすごく自然に描かれているんですね。横道世之介の場合は逆に、単なる大学のサークルの友達だったり別れた彼女なので、その現在は疎遠で、もう過去の人になってしまったんだけど、昔たしかに登場人物の人生に何かしらの影響を与えた感じが、とてもリアルなのです。

この映画は横道世之介の大学生活の話をメインに、15年後にその友人たちが彼のことを回想する場面がたびたび挿入されるのですが、最初の童貞カミングアウトの友人は、風呂場で何を話したのかを覚えていないんですね。だけど、「あの時何話したか覚えてないけど、すごい楽しかった」みたいなことを言うのです。それがまたリアルで。たぶんほとんどの人の青春時代って、友達と何話したか覚えてなくて、でもただめちゃくちゃ楽しかった記憶だけが残っているんだろうなーと思います。

 

 評価

60点(100点満点中)

最後に

横道世之介」、「サニー」と同じような、過去を振り返る系青春映画ってたくさんあると思うのですが、同じく今年観た映画で「きっと、うまくいく」という映画がありますが、こちらは僕が生涯観た中でもベスト10に入る傑作だと思うので、めんどくさいから感想は書きませんが観たら良いと思うのです。