2018年におもしろかった漫画まとめ

はじめに

2018年におもしろかった漫画を書きます。あくまで2018年に僕がおもしろかった作品なので、2018年に出たかどうかは関係ありません。ということで既に有名な作品も多いです。 あと、作品が未読の人でもつまらなくならない範囲でネタバレしていきます。

はじめの一歩

はじめの一歩(123) (講談社コミックス)

はじめの一歩(123) (講談社コミックス)

いきなり最初に例外を書きます。「おもしろかった」ではなく「おもしろくなりそうだった」漫画です。でも、2018年に大きな動きがあった作品ということで書かざるを得ません。 はじめの一歩って漫画は今の若い人にはどういうポジションなんでしょうか?僕としては完全に全盛期を過ぎた作品です。しかし、その全盛期は僕ら30代の漫画少年にすさまじいインパクトを残した気がします。いまでも幼児はドラゴンボールかめはめ波のマネをするそうですが、僕ら30代にとって、それと並ぶのがダイの大冒険のアバンストラッシュとはじめの一歩のデンプシーロールでした。今でももし暴漢に襲われたらいつでもガゼルパンチを打つ準備はできているし、死角からドラゴンフィッシュブローを打ってそれを顎先に掠めれば脳を揺らせると信じています。ワンツーは同じ軌道で打つと強いというのも一歩で学びました。

しかしですね、そんな一歩もマガジンの意向なのか作者の意向なのか知りませんが、漫画界で伝説となるレベルの引き伸ばしをし続け、徐々につまんなくなり始めました。一歩が日本チャンピオンになって2〜3戦はおもしろかったのですが、そこからはずっとワンパターンの戦い。「早くライバルの宮田と世界戦やって終われよ」と全国民が思っていたことでしょう。リアルな時間にして20年ぐらい…おい、まじか。そりゃ今の若い子は置いてけぼりだわ。

はじめの一歩概略史

そして、ついに2018年初頭に引退してしまいます。宮田と戦うこともなく、よくわからんポッと出の兄ちゃんに負けて引退。なめてんのか。

いやいや、でもようやくあのよく分かんないエンドレス防衛戦地獄を抜け出したので、新しい展開が来る…!と期待も半分ありました。

しかし…

一年経っても…

まだ戦わない…!

どういうこと!?なんでセコンドになって後継者育てる流れになってんの?そこは「パンチドランカーになったけどラスト一戦を宮田と戦いたい」とでも言って一発かませば勝っても負けても全員すっきりこの物語の呪縛から逃れられるのに?

すんのかい!?せんのかい!!


すち子と吉田裕の「ドリルすんのかいせんのかい」講座

もう20年待ってる物語がやっと動き出しそうで、今年に入ってからずっとはじめの一歩を追い続けています。昨年とかまではちょいちょい漫喫で読むぐらいでしたが… でも未だに全然話が動かない。これなんなの?誰がどういう気持ちで読んでんの?誰か止めて!平成終わるどころの騒ぎじゃないよ、このままじゃ次の年号でも終わらないよ!?

ていうか今 Amazon のリンク貼って気付いたんですが123巻も出てんのかい。やばい。

ワールドトリガー

こちらはずっと休載していた作品が動き出したということで、とてもめでたい話。しかも、再開してもクオリティが全く変わらず相変わらずのおもしろさです。

ワールドトリガーについては、すべての部分がおもしろすぎるので細かく書くとそれだけで3時間ぐらいかかるのでやめときますが、とにかくいまだにおもしろいです。19巻、ずっとおもしろい。

Dr.STONE

Dr.STONE 8 (ジャンプコミックス)

Dr.STONE 8 (ジャンプコミックス)

ワールドトリガーが残念ながらジャンプSQに移籍することが決まり、ハンターハンターもいつやるのかまた分からない状態となって、「そろそろジャンプ買うのやめるかぁ」状態の僕の心を必死でつなぎ留めているのがこの作品。

最初の頃は癖が強すぎるのと情報量が多すぎて「どこをおもしろポイントとしていいか」が分からなかったのですが、村ができて多くの人を巻き込んで文明を創り始めるところから飛躍的におもしろくなりました。そうか、これは科学文明の発達を追体験する物語だったのか。元理系の物理少年だった自分としてはたまりません。自分の子供が生まれたら読ませたい作品。

科学ネタもそれ自体知的好奇心をくすぐるおもしろさがあるのですが、それとともに主人公の千空やその仲間たちから感じる「科学や文明へのリスペクト」がたまりません。 フィクションの世界って、とかく科学や文明より「人の心」とか「生命の神秘」とか「自然の豊かさ」が美しいものとされるケースが多いですが、僕は生まれてから一度もそう思ったことはなくて、科学って人間が数千年以上かけて知恵と努力を結集させた素晴らしいものだと思っています。科学っていうと大げさですが、誰かと協力してチームで知恵を駆使して何かを作っていくところでしょうか。人類は偉大です。

ちなみに、科学への情熱の物語は、多少ややこしいものの少年ジャンプレベルの熱さを兼ね備えています。 すごーく前に以下の記事でサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」について書きましたが、同じ作者の「宇宙創成」や「暗号解読」が同様のノリでとてもおもしろいです。

charlie.hatenablog.com

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

マイホームヒーロー

マイホームヒーロー(1) (ヤングマガジンコミックス)

マイホームヒーロー(1) (ヤングマガジンコミックス)

ヤングマガジンで第二部が始まりましたね。ぱちぱち。推理小説好きのお父さんが娘に近づくヤクザの彼氏を殺して完全犯罪するお話です。 安定した画力と展開で、とにかく初回からずっとおもしろいです。ずっとおもしろい、これすごい。 彼氏が死んだことで犯人を追求するヤクザとの騙し合いになるんですが、毎週毎週これはもう駄目だろって追い詰められるのにいろんな機転を利かせてそれを乗り越えるので、読む手が止まりません。現在6巻まで出ていますが、未読の人はお正月に一気読みしましょう。 誰かを殺してしまったときの証拠隠滅の参考にもなります。大事な娘さんがいる人は必見です。

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿

マイホームヒーローと違って、こちらは完全にコメディ漫画。あの「金田一少年の事件簿」を犯人視点で描く物語です。 子供の頃読んだ金田一に対して、こう思ったことはありませんか? 「こんなトリック普通思いつかんよなぁ…これができれば実は完全犯罪って簡単なんじゃない?」 ところがどっこい、完全犯罪って大変なんですね。これを読めば分かります。

例えば…

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1巻より

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1巻より

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1巻より

全編こんな裏話が楽しめます。 幸運なことに、僕は初期の金田一を全巻読んでいるので「あー、あれあったね!たしかに大変そう!」と膝を打つネタばかりでした。

正直、金田一本編よりおもしろいぐらいです。この漫画のために金田一を読み返したい。最近名作のスピンオフが「トネガワ」以来増えてますが、玉石混交な中で、これはトネガワに匹敵する出来栄えです。

テセウスの船

テセウスの船(1) (モーニングコミックス)

テセウスの船(1) (モーニングコミックス)

1989年に北海道で起こったある小学校の無差別殺人事件。その容疑者は事件後28年経っても容疑を避妊していて、息子である主人公が過去にタイムスリップして真相を 確かめるお話。

北海道、殺人事件、タイムスリップ…あれ、これ「僕だけがいない街」にそっくりじゃねーか!と思いますが、読んで見ると不思議と中身が全然違うことが分かります。あっちは誰かを救うお話ですが、こっちは父親の真相を確かめる(≒冤罪を晴らす)話。似てるけど、作品を読んだときの感情が違うんですよね。誰かを救いたいのってすごく前向きな正義感ですが、真相を確かめるのって、もっと不安を伴ったドロドロした感じです。 父親への思いとか、僕の好きな映画「オーロラの彼方へ」にちょっと似ているかも。

charlie.hatenablog.com

テセウスの船」とは、「ある物体(オブジェクト)の全ての構成要素(部品)が置き換えられたとき、基本的に同じであると言える(同一性=アイデンティティ)のか、という問題」という意味。(Wikipedia より) 今の所タイトルの意味が大きく物語に影響してないんですが、これからきっといろいろあるんだろうなーとめっちゃ続きが気になる作品です。

ゴールデンゴールド

同じ作者の前作「刻々」がプチヒットしましたが、今度は打って変わってバトル要素一切無しの不思議サスペンスです。変な人形の「フクノカミ」を海で拾って家に置いておいたら、突然、金運がめちゃくちゃ上昇しまったある島の旅館のお話。世にも奇妙な物語にありそう。

このフクノカミがめちゃくちゃ不気味で、今のところほぼ人畜無害(多少死人も出てますが)でみんなが儲かるただそれだけ。なのに、だんだんと島の人達が金儲けが楽しくなっちゃって、おまけにフクノカミ的思想に染まっていっちゃうんですね。それを主人公の少女・瑠花と島に来た旅行者だけが、染まらないので、不安にかられるという。 よくありそうな話ではあるんですが、この作者の素敵なところはそのバランス感覚。みんな大人が冷静で常識的なんですよね。物語の都合で一方的にフクノカミを「悪」と決めつけなかったりする。

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5巻より

読者視点だと、先程の死人が出た話とか知ってるので明らかに「フクノカミは悪!」って思うんですが、主人公たちはいまいち自信を持てないまま、変わっていく島を見守るしかないっていう。

これ、たぶん「カルト宗教」とか「儲け話」の比喩なのかなぁと思います。例えば家族が怪しい不動産投資とか宗教にハマったとして、それが完全に悪いことかどうかって不完全な情報しか持ってない他人には何も言えないところ、あるじゃないですか。結局は本人が幸せなら良いかもしれないし、本当に儲かるかもしれない。そういうの。

灼熱カバディ

灼熱カバディ 1 (裏少年サンデーコミックス)

灼熱カバディ 1 (裏少年サンデーコミックス)

こちらも既に長期連載で前々からずっとおもしろいのですが、今年に入ってようやく大会での試合に入って熱量が段違いになりました。(練習試合だとどうしても緊迫感が無いっていうね…) 灼熱カバディカバディ漫画にあってカバディ漫画にあらず。すべてのスポーツ漫画に共通する努力・友情・勝利が備わっています。たまたま題材がカバディなだけです。 この漫画の好きなところは、登場人物にほぼ噛ませ犬がいないところですね。敵も味方もエースも雑魚キャラも、勝っても負けても全員かっこいい。そのため、主人公は作品中10分の1ぐらいしか活躍せず最近はもっぱら空気。でも、それがいい。

毎週火曜日にマンガワンで更新中。0時を回ったら灼熱カバディを読みに行くのがルーチンになっています。

付き合ってあげてもいいかな

付き合ってあげてもいいかな (1) (裏少年サンデーコミックス)

付き合ってあげてもいいかな (1) (裏少年サンデーコミックス)

こちらもマンガワンの作品。百合というジャンルがもはや漫画・アニメ界で一大ジャンルとなっていることは知っていたのですが、生まれて初めてぐらい百合漫画をおもしろいと思って読みました。

大学生の冴子と みわ が付き合う話です。

題材は百合なんですが、それよりもド直球の恋愛漫画だなぁという感じがします。それも、あんまり無い「付き合うまで」を描くんじゃなくて「付き合ってから」を描く漫画。 付き合ってから本当に好きなのか悩むところとか、セックスするのに悩むところとか、もしこれが男女の普通のカップルだったら今さら過ぎて物語にならないところを、百合という一つのフィルターをかますことで、そういうありきたりさも新鮮に感じます。

ちなみに、この漫画を読んでから「あれ、百合漫画ってこんなにおもしろいの??」と思ってひたすら百合漫画を買い漁ったおかげで、今僕のKindleが大量の百合漫画で埋め尽くされています。でも、いろいろ読んだけどこれが一番おもしろい。

進撃の巨人

進撃の巨人(27) (講談社コミックス)

進撃の巨人(27) (講談社コミックス)

いまさら過ぎる漫画です。しかしながら、連載開始からずっとおもしろい漫画が2018年に入っていろいろな謎が解明されて世界も広がって、さらにおもしろくなるって偉大すぎます。 初期の頃のパンチのある巨人への恐怖感は薄れてしまったものの、全く別の異世界戦争ものとしてさらにおもしろくなってきているのって神ですね。 どこまで初期からこの構想を考えていたんだろう…と頭が下がります。もう27巻です。でもずっと物語の綻びが出ないまま続いています。

「巨人の謎が解けたらやることあるのかな」と思ってましたが、この漫画のうまいところはここで「○年後」を挟んできたことですね。 同じ時間軸でやるより、その○年の間に登場人物の成長や思惑の変化があって、新たな謎が生まれて緊張感を持って楽しめました。

20巻ぐらいで飽きてやめちゃった人も、またおもしろくなるので続きを読んだほうがいいですよ!!

さいごに

だんだんと感想の文字数が少なくなっていくのは、ただ単に書いてて疲れてきただけです。作品のおもしろさと相関はありません。

ではみなさん、よいお年を。