呼吸も止まる怖さ!映画「ドント・ブリーズ」がめちゃおもしろい件

ドント・ブリーズという映画がめちゃくちゃおもしろかったです。僕が今まで見たホラー映画で一番ぐらいでした。

 

ドント・ブリーズ (字幕版)

 

あらすじ

お金のない不良三人組(男2女1)が一人暮らしの退役軍人の老人の家に忍び込んでお金(当初予定30万ドル)を盗もうとする。おまけに老人は盲目。チョロい犯行と思いきや、退役軍人は目が見えない分物音や匂いで敏感。簡単に三人組は見つかってしまう。おまけにムキムキで凶暴、盲目なのに超強い。果たして三人組は無事に生きて家から出られるのか?

 

感想

これは傑作でした!

 

まず、目が見えない老人をモンスターとするアイデアが秀逸!普通に考えれば、目が見えない=弱者なんですが、そこが暗闇と元軍人という効果で恐怖の対象として見事に昇華させています。

普通に考えれば若者3人で囲めば圧勝できそうなんですが、この老人、ちょっと頭のネジが外れているので暴力に対して躊躇がありません。異常な強さでじわじわと三人を追い詰めていきます。この弱そうな存在がキレたら何するのか分からないギャップが、怖さを引き立てています。

 

暗闇で音を消して逃げ惑うというのも新鮮です。こういうのってスパイ映画の潜入シーンとかではよくあるのですが、スパイ映画だと「バレたら終わり」だったり「主人公が無敵」なことが多いので、あんまり緊張感がなかったりするんですよね。

しかし、この映画では既に主人公たちが忍び込んでいることは老人にバレています。そのため、いかにバレないようにするかというよりも、バレてもいかに逃げ続けるかの勝負になります。一発勝負ではなく、物音を立てて気付かれたら目の前に老人が来ても息を止めてやり過ごして…捕まってボロクソにやられても、機を見て老人から離れたらまたかくれんぼ再開。ワンパンチで試合が終わるのではなくて、インファイトの殴り合い。主人公たちは追い詰められてボロボロになりながらも、少しずつ脱出に向けて奮闘していくのが見どころです。

 

上映時間が1時間28分と短めなのもいいですね。その上、展開に無駄がなくて超スピーディー。序盤で老人の屋敷に入ってからはほぼずっと老人から逃げ続ける話。その上展開が二転三転して、どうオチが着くのかなかなか先が読めず、上映時間中ずっとテンションが下がりません。

 

このジェットコースターのような展開の中に、ほんの少しのスパイスとしてのストーリー性とテーマ性も良く効いています。ストーリーは非常に簡易なのですが、中盤になぜこの老人がこんなにイカれてしまったのか、老人が何を考えているかとともに、ゾッとするような怖さを感じさせる一面もあります。それは数分で決して冗長ではないのですが、それまでの暴力と暗闇とは質の違い怖さが、映画全体をグッと引き締めています。

 

ちなみに、ここまで褒め続けましたが、ほんの少し、不満点もなかったわけではありません。

その一つが、主人公たちのほうが悪役だよねってところ。老人もかなり頭がイカれていてどっちもどっち感はあるのですが、それでもやっぱり最初に一人暮らしの老人から金を盗む主人公たちがかなり感じ悪い。そのため、襲われていてもどっちに感情移入して良いか分からなくなったりします。(これは監督の狙いなのかもしれませんが)

もう一つ、せっかく”音”をテーマに据えているのに、その閾値がぼやけている所。この映画っていかに老人にバレずに対処するか機転を利かすのがポイントなのに、老人がどの音だと聞き取れたり居場所を突き止められるかがブレている気がするんですよね。例えば、床板の音がギシってなって、居場所がばれるかと思いきやじっとしてたら気づかなかったり。ここは、鳴った音を誤魔化すために別のところで音を鳴らすとか、そういう頭を使った解決策が欲しかったです。まぁ、ちょっと音が鳴っただけで万能で追跡できたらスーパーマンすぎるからこれぐらいがちょうどよいのかもですが。

 

しかしながら、上記の不満点を補って余りあるおもしろさです。単純に娯楽映画としてめちゃくちゃ優秀です。かなり怖いですが、グロテスクな怖さや幽霊的な怖さではなく、遊園地のアトラクションのようなさっぱりとした怖さです。見ている間中、まるで主人公たちと同じように息を潜めていつバレるかひやひやします。

 

怖い映画に耐性のある人は、ぜひ見てみてください!