寿命が存在しない世界。「百年法」というおもしろSF小説

百年法という小説がめちゃくちゃおもしろいです。 

百年法 上

百年法 上

 

 

映画も小説も、好きなジャンルはSFです。

SFというと科学的でちょっと頭使うのかと思われがちですが、僕が好きなSFは科学的考察がきちんとしているハードSFとかスターウォーズみたいに宇宙行っちゃうスペース・オペラとかではなくて、星新一みたいな感じのやつです。物語に if 要素を一個入れて、それによって広がる世界が緻密にシミュレーションされていて、きちんとドラマも生まれているのが最高です。

ということで、この百年法という小説がめっちゃおもしろかったです。

 

あらすじは、こんな感じ。

不老不死が実現した日本。しかし、法律により百年後に死ななければならない――永遠の若さを手に入れた日本国民に、百年目の“死の強制”が迫っていた。

これだけですごく興味惹かれませんか?

 

任天堂の人がスプラトゥーンについて、「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである」と言っていたのを思い出しました。この小説もそんな感じ。これまで不老不死を扱った物語は多数あれど、それが全国民に広がった状態を描いたものって見たことありませんでした。全国民が不老不死になるとどうなるか?当然、人口爆発とか経済問題とかいろいろ出ますよね。その状態が、まんま今の超高齢化社会を迎えた日本をさらに極端にした状態で、そこで考えられうる死生観とか新しい精度とかに唸らされます。 

 

イノベーティブな技術や制度で、一見世の中を便利で幸せにしているようにみえて、実際は不幸な人をたくさん生んでいるものってありますよね。例えばSNSとかも楽しそうに見えて、統計的にはSNSをやっている人のほうが不幸な人って多いっていうし。しかし、イノベーションというものは発明した段階ではそれがどちらに傾くかはなかなか判断できない。なので、僕らはイノベーションを良い方に向ける努力をすることしかできないのです。この物語では、残念ながらそこだけ有耶無耶にして終わってしまったのが残念。

 

そんなことを思いました。読んだ後に、誰かと語りたくなる本です。