ミトコンドリア・イブという謎な女性の正体
「ミトコンドリア・イブ」という言葉を知ったのは映画と小説の「パラサイト・イブ」の時期だったと思う。たぶん詳しく知らない人も名前ぐらいは聞いたことあるでしょう。
だいたい映画とか小説とか漫画とかで出てくるミトコンドリア・イブは、「人類の祖先」とか「アフリカに住んでた」ぐらいの情報。ミトコンドリアってのを調べていくと人類の祖先が分かるっていうけど、それマジ!?なんで????という疑問を抱き続けて早15年ぐらい。
ここで疑問なのは、「人類の祖先が一人の女性に特定できる」っていうのがどういうことか。なんで特定できるんだろう。そもそも人は猿から進化したはずなのに、一人の突然変異の女性の人間が生まれて、その人が交配しまくって人間がここまで人口を増やしたってことなの?そんなすげーことってあるの??
…というのが長年の疑問だったんだけど、前提が間違っていました。
分子進化の中立説に基づき、ミトコンドリアDNAの解析によって、人類最初の女性は誰かを探した研究者たちがいた。結局、その女性は、太古のアフリカに存在していたと結論付けられ、その女性を、創世記において神が創った初めてのヒトの女性・イヴになぞらえて、ミトコンドリア・イヴと名付けた。ただし、「人類最初の」と言ってもそれは「すべての人類はたった一人の女性からはじまった」ということではなく、「すべての人類は母方の家系をたどると、約15-30万年前に生きていた一人の女性にたどりつく」とするのが正確である。つまりこの研究では人類最初の女性を発見できたわけではなく、全人類に共通の祖先のうちの一人がアフリカにいたということを確認できたに過ぎない。
むむむ、ということは、人類の起源がたった一人の女性から始まるわけではないのか?
もっと詳しく書いてあるミトコンドリア・イブの項目には、以下のように書いてある。
しばしば誤解を受けるが、彼女は「同世代で唯一、現生人類に対し子孫を残すことができた女性」ではない。母方以外の系図を辿れば、彼女以外の同世代の女性に行き着くことも可能である(後段の「よくある誤解」を参照)。人類の出アフリカの時期を求める手掛かりのうち、年代特定が比較的容易なサンプルの一つであるという以外には、彼女は人類史に特別な意味や興味を占める人物ではない。
まじか!!
「特別な意味や興味を占める人物ではない」なのか!!
詳細を要約すると、以下のような感じ
- ミトコンドリアというものは、女性からしか遺伝しない。
- そのため、ある夫婦から男性が生まれた場合、その家系の(というかお母さんの)ミトコンドリアは後世に伝わらずに途切れる。
- 夫婦が子供を生む人数は限られ、男か女が生まれる確率は半々なので、たとえば100人の村(女性50人)があったとする。ある世代のミトコンドリアが50種類あった場合、それぞれの夫婦が2人ずつ子供を産んだら2年目には単純に50種類、3年目には25種類、4年目には12種類…というように、最初のミトコンドリアDNAは何世代目かで途切れてしまう。
- そうやって現代の人類も遡れば何世代目かである一人の母親に到達できる。
- つまり、ミトコンドリア・イブは「子・孫・その子孫に至るまで女性を途切れずに運良く生み続けることができた人」という以上の意味は無い。
ということらしいです。
まじかー。
ちなみに、Wikipediaによれば、「ラッキー・マザー」と呼び替える動きもあるようです。こっちの名前のほうが、全然しっくりくるし変な誤解を生まないですよね。