映画「舟を編む」を見たら新明解国語辞典読みたくなった

先日の日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞、優秀主演女優賞、優秀助演男優賞、優秀音楽賞、優秀撮影賞、優秀照明賞、優秀美術賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞、新人俳優賞と書いててめんどくさくなるぐらい優秀な出来栄えだった映画「舟を編む」を見ました!残念ながら期待に届かない出来栄えでした!

 

 

あらすじ

玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は職場の営業部では変人扱いされていたが、言葉に対する並外れた感性を見込まれ辞書編集部に配属される。新しい辞書「大渡海」の編さんに従事するのは、現代語に強いチャラ男・西岡正志(オダギリジョー)など個性の強いメンツばかり。仲間と共に20数万語に及ぶ言葉の海と格闘するある日、馬締は下宿の大家の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれし……。

 


映画『舟を編む』予告編 - YouTube

 

感想

辞書の編集がテーマという、見るからに小難しくて退屈そうな映画なんですが、逆にきっと一般人には思いもよらない波瀾万丈なおもしろさがあるのだろうな、と期待してみたら、逆に期待が高すぎて思ったよりも平坦な道のりの映画にまず驚かされました。

というか、宮崎あおいが出てくるまでは死ぬかと思うぐらい眠かったです。

 

また、映画のポスターや売り出し方を見る限り、「辞書編集に励む主人公は口下手だけど、いいやつで、好きな人に思いを伝えるのにその辞書編集で培ったスキルが役に立って恋愛が成就する」みたいなラブストーリーかと勝手に思っていましたが、ラブストーリーは全体の2割ぐらい。すごく薄味。かわいい宮崎あおい松田龍平がイチャコラ120分するのかと思ったら、宮崎あおいとの一件は一瞬で片が付きます。意味わからん。もっと宮崎あおいを出せ。ちなみに宮崎あおいが最もかわいく映っている映画は「ただ、君を愛してる」ですので、かわいい宮崎あおいが見たい人はそちらを見たほうが良いです。映画としては駄作ですが。ちなみに宮崎あおいの出た作品でもっとも良かったのは、「ちょっと待って、神様」です。ちなみに、「ちょっと待って、神様」はなぜかどこかの悪い人がYouTubeに全部アップしているようで、暇な人は見てみるといいですね!

 

それにしても、宮崎あおいの役がありえない。下宿先の大家さんが高齢だからって突然やってきて、主人公と一つ屋根の下で暮らし始める。それなんてエロゲ状態。おまけに彼氏もおらず、一発告ったら5分後には結婚してるってなんやそれーーー!!!

 

映画として伝えたいのは、地味に見える仕事にも意味があって、そして何十年先まで社会の役に立つ自分の成果を残すために、地道な作業をすることの大切さという、とても普遍的なテーマです。そのテーマはとても良いんですが、いかんせんそれを伝えるための細部が弱いです。

まず、この映画での盛り上がり箇所が概ね辞書という素材と関係のないところで発生します。恋愛だったり、誰かの異動だったり、誰かの死だったり。せっかく辞書を使うからには、辞書ということでもっと盛り上げて欲しかったなぁと思います。ラスト付近にちょろっとあるんですが、他のエピソードに比べると取ってつけたように入れた感じで、映画として必然性を感じません。ここをもっと練って欲しかった。

あと、もっと言葉のおもしろエピソードを入れて欲しかったです。作中には、「右」をどう辞書で表現するか、とか、「切る」についてとか、「ダサい」とか、「恋」とかいろいろあるんですが。もっとおもしろいのないの?と思ってしまいました。ただ、「恋」の語釈は名言でした。ここはぜひ映画を見て楽しんでもらえたらと思います。

 

原作の小説はもっと映画の脇役にもスポットを当てた群像劇らしいです。そっちのほうが辞書の仕事とうまくかかっていて良かったなぁと思いました。辞書って無数にある言葉があつまって、すごい時間をかけながら一つの作品になると思うんですが、それと無数の人の生き様が交錯しながら人間社会とか歴史ができていく様子って、似ていると思うのです。まぁ、読んでないので知らないですが。

 

評価

55点(100点満点中)

 

ちなみに

僕は昔は辞書がすごく好きでした。今でもWikipediaを眺めて知らない言葉を漁るのが好きなんですが、この映画を見て、最初は辞書が好きだったことを思い出しました。

僕が辞書を好きになったきっかけは、中学校に入った時に国語辞典を買ったことなんですが、それが「新明解国語辞典」ってやつで。そこに書いてある「ばか」という単語の語釈が、とても魅力的だったんですね。

<馬鹿> [梵語の音訳「莫迦・慕可」、また、文語形容詞「はかなし」の語根の強調形という]

①記憶力や理解力が世間一般の人に比べてひどく劣っているととらえられること(人・様子)。「おだてにのるほど―ではない/―のひとつ覚え」

②社会通念としての常識にひどく欠けていること(人・様子)。「専門―/親―」

③どう考えても不合理で、納得できないと思われること(様子)。「―も休み休み言え/―を見る」

(運用) ①について。 (a)人をののしる時によく用いられる一方、心を許し合える間柄の人に対しては親近感を込めて何らかの批判をする際に用いられることがある。例、「あのばか[=ばかだと言える間柄の人]がまたこんなことをして/ばかばか[女性が、相手を甘えた態度で避難して言う言葉]」 (b)度を超えて人がいい様子を、ほほえましく思って(皮肉って・自嘲して)言うことがある。例。「あいつ(おれ)もばかだねえ」 ③は、「そんなばかな」などの形で、あまりにも意外なことに出会って、あり得ないことだという気持ちを込めて感動的に用いられることがある。例、「もうすぐ会が始まるのに司会者来てないなど、そんなばかな」 

(参考)http://ameblo.jp/5lastrun/entry-11246582242.html

 この生きた語釈すごい!!「バカ」って言葉ってただ人をけなすだけと思いきや、たしかにそこに複雑な人間関係とかも垣間見えるんですね。僕は子どもの頃この辞書に感動して、他にもおもしろい言葉がないか探しまわっていました。