「探偵はBARにいる」を観た

「キサラギ」も「リーガル・ハイ」もおもしろかったので、同じ脚本(古沢良太)の映画「探偵はBARにいる」を観ました。期待して観たら、おもしろくなかったです。

あらすじ

行きつけの札幌・ススキノのバーにいた探偵(大泉洋)と相棒の高田(松田龍平)は、コンドウキョウコという女からの依頼の電話を受けて早速行動を開始。しかし、何者かに連れ去られ、雪に埋められてしまうという事態に。報復しようと立ち上がった2人の前に、謎の美女・沙織(小雪)と実業家・霧島(西田敏行)という人物、そして四つの殺人事件が浮かび上がり……。(シネマ・トゥデイより)


最初の方は、コメディタッチですすきのを舞台に飛び回る大泉洋の姿がとても魅力的だったんですが、物語が進むに連れて、だんだんとコメディはなりを潜めてシリアスな探偵ドラマになっていきます。この探偵ドラマが、とてもおもしろくなかった。

その理由が2つ。

主人公がバカすぎる

シリアスに行くなら、登場人物が賢くて、合理的な行動を取るのは必須だと思うのですが、この主人公の探偵がそのあたり皆無。これがコメディなら別にいいんですがね…
例えば、事件の犯人だと思う人物の敵地に赴いて、直接「あなたが犯人ですよね?」みたいなことを言いに行ったりするんですよ。そのシーン自体は探偵かっこいい!ってなるんですが、結局敵に囲まれて犯人を捕まえるわけでもなく逃げ出しちゃって、「おまえそうなるの分かってんだろ!何しに行ったんだ!」って、観ていて突っ込まざるを得ない。こういうシーンが何回も出てくるんですね。
探偵の行動原理が徹頭徹尾そんな感じで、何を考えているのか理解できない。というか、映画的に盛り上がるシーンの演出のために探偵が動かされている感じがして、生きた人間としての探偵の考えで行動させられていない。だから、こんなやついねぇよって思いがあって、全然感情移入できない。

上のシーンだと、そのせいで重要な証人が殺されちゃったりして、「それおまえがバカなことしたせいだろ!」って思ってしまうんですね。そりゃあ犯人も、いきなり探偵が自分のところに来ておまえが犯人だとか言われたら、その情報源の証人に報復とかするだろ…

伏線が回収されていない

映画のメインの謎解きとしては、この事件の犯人は誰か?依頼主は誰か?って2つがあるんですけど、これを解くための伏線が回収されていない。これは致命的。
良い脚本ってのは出された伏線が全部回収されて、最後にオチが分かった時に「ああ、あの時のこれはこういう意味だったんだ!」って膝を打つのが爽快だと思うのですが、この映画ではそこらへんが放置されていて、「思わせぶりな演出」が結局思わせぶりなだけで、特に意味は無い。なんじゃそりゃ。

例えば、ネタバレなんですが依頼主の候補として被害者の娘が写真で出てくるのですが、それが吉高由里子で、その後まったく出てこなかったり(笑)。

いいところもあったけれど

後半の失速感がハンパないんですが、前半は結構おもしろいので本当に残念。特に探偵のツッコミがいちいちおもしろくて、探偵が殺されそうになるシーンでは、
犯人「ジンギスカンはラムとマトンどっちがいい?」
探偵「はあ?」
犯人「会話が途切れたらやりづらいだろうから、気を使ってんだよ」
探偵「そういうタクシー運転手が一番迷惑なんだよ」
なんて感じで、こういったちょこちょこしたところはとてもセンスがあります。